SINCE 2005/05/23

オードリーの自己表現

『ローマの休日』では、アン女王のファッションの変化は、彼女が自己を肯定し、より有能な人間に成長していく過程をはっきりと表すものになっています。映画のラストで、王女は明らかに「成長」し、自制心に富み、公的な役割と私的な自己を立派に両立させられるようになっています。舞踏会を終えた後、まだ幼さの残るアン女王は寝室で横になっています。その目は大使館の豪華な室内装飾を追う。このシーンから伝わってくるのは、王女が上品で落ち着いた伝統的な女性像の中にがんじがらめにされていることです。彼女はやがて、そこから逃げ出すことを考えます。
自由への憧れはまず外見上の女らしさ、つまり「衣服」の変化に直結し、女王はネクタイのついたプレーンなブラウスとスカート、かかとの低いパンプス、手袋というすっきりした服装に着替えます。このスタイルは、それまで彼女を抑え付けてきた重厚な衣装とは全く異なっています。同じように『麗しのサブリナ』のヒロインのスタイリッシュな変身も、自我の獲得と同調しています。
オードリー・ヘップバーンの映画における、自我と個人的なスタイルとの関係は、50年代から60年代になるにしたがい徐々に困難なもの、自己を制御するものになってしまいます。『パリの恋人』と『マイ・フェア・レディ』で、彼女の役柄は変身そのものが以前の作品より難しくなり、しだいに、無邪気な喜びが減り、主人公の感情と自意識が制限される構図になります。

女性の人生において、身に着ける服と自身の感情との関係は非常に重要であると思います。『ローマの休日』と『麗しのサブリナ』の変身物語がモダンでシンプルで、変身したヒロインに力を与えるものであったのに対し、のちの二作品では逆に、しだいに伝統的に女らしいとされる服装に縛られ、主観の表現が制約されてしまいます。オードリーの役柄にとって、ドレスは本人に力を与えるものであり、一転してそれを制限するものでもあったのです。

以下のオードリー主演の映画をぜひ見比べてみてください。また、彼女のファッションにも注目してみてください。
                                                                                                                              
作品名 公開年 作品内容・注目ファッション
ローマの休日 1953年 ヨーロッパのとある国の王女アン(オードリー・ヘプバーン)が、親善旅行の一環でローマを訪れる。堅苦しい公式行事や、常に側近たちに囲まれたプライバシー皆無の日々に不満を募らせていたアン王女は、深夜、こっそりと滞在先の宮殿から抜け出す。好奇心いっぱいの彼女は、着の身着のままローマの街へ繰り出し、たった一日だけの自由を謳歌する。偶然出会ったアメリカ人新聞記者ジョー(グレゴリー・ペック)は、素性を明かさないアンの正体に気づき、王女の特ダネ記事をものにするために画策をめぐらすのだが・・・。
麗しのサブリナ 1954年 大富豪ララビー家のお抱え運転手の娘サブリナ。彼女はララビー家の次男でプレイボーイのデイヴィッドに想いをよせていたが失恋し、それをきっかけにパリの花嫁学校に留学。帰国した彼女は、以前の彼女とは別人と言ってもいいほど、美しくステキな女性になっていた。そんな彼女にデヴィッドは熱を上げ、デヴィッドの兄で仕事一筋のマジメな長男ライナスまで虜になってしまうのだった。
戦争と平和 1956年 19世紀の帝政ロシアの末期。ナポレオンの率いる強力なフランス軍がロシアへの侵攻を開始した。揺らぐ国内情勢の元で、貴族の私生児で跡継ぎのピエール(ヘンリー=フォンダ)、やはり貴族の子息で帝国将校のアンドレイ(ファラー)、そして伯爵令嬢のナターシャ(オードリー=ヘップバーン)の三者の交流を描く。
パリの恋人 1956年 アメリカのファッション雑誌クオリティの女性編集長マギー(ケイ・トンプソン)は、新しいモデルを発掘して、雑誌を大いに売ることを計画した。専属のカメラマン(フレッド・アステア)は、他のモデル撮影時、撮影場所として、偶然使わせてもらった古本屋の店員ジョー(オードリー・ヘップバーン)に白羽の矢を立てる。哲学を好み、全くファッションには興味が無いジョーだったが、あこがれの都パリで撮影が行われることを知り、心を動かされる。
尼僧物語 1958年 第二次世界大戦前のベルギー。医学博士を父に持つガブリエル(オードリー・ヘップバーン)は父と同じ医学の道を志す。ベルギーでは女子には医学校の門戸が開かれていなかったが尼僧になれば研修で医学校に派遣され男子学生と共に医学を学ぶことが可能だったのでガブリエルは尼僧になる決意をする。しかし修道院の戒律と宗教教育は厳しく、医学への思いは神への奉仕の一手段としてしか実現を許されない。疫学を修め植民地で病人を救うためにガブリエルは紆余曲折の道をたどる。動乱の時代を生きた一人の女性の自己実現の物語。
緑の館 1959年 カラカスから革命を逃れてアマゾンのジャングルに入った青年アンソニー・パーキンスは、村の長老から、「森に居る魔女を殺せ。」と命令される。魔女とは、金を掘る老人の孫娘、リーマオードリー・ヘプバーンの事だった。
許されざる者 1959年 テキサスで牧場を営むザカリ−家の近辺に、不気味な老人が現れた。ザカリ−家の養女レーチェル(オードリー・ヘプバーン)にはインディアンの血が流れている、と言う。ある日、カイオワ族の男が、ザカリー家の長男ベン(バート・ランカスター)に「幼いときに別れた妹を返せ」と要求した。ベンはこれを拒絶するが・・・。
ティファニーで朝食を 1961年 舞台はニューヨーク。ホリー=オードリー・ヘップバーンの楽しみはテイファニーのショウ・ウィンドウを眺めながら朝食をとること。お気に入りはクロワッサン。ホリーは、下心のある男達を見つけてはお金を巻き上げる詐欺まがいの行いで生活していた。ある日、彼女の隣に新人作家のポール=ジョージ・ペパードが引っ越してくる。彼は売れない作家でパトロンの中年女性の援助で生活する言わば若いツバメ。ポールも最初は彼女の行動に戸惑うが、次第に惹かれあうことになる。麻薬取引にホリーが利用されたことから物語は急展開していく・・・。
噂の二人 1961年 リリアン・ヘルマン「子供の時間」の戦前の映画化作品『この三人』を監督したワイラーが、メガホンを持って、自らリメイクに挑んだ作品。カレン(オードリー・ヘップバーン)とマーサ(シャーリー・マクレーン)は女学校時代からの親友同士であり、共同で小学生を対象とした、寄宿学校を経営していた。父兄からの信望も厚く前途は洋々であったが、ある問題児の心ない発言が元で、徐々に二人は窮地に立たされていく・・・。
シャレード 1963年 レジーナ=オードリー・ヘップバーンは夫と離婚する予定。スキーを楽しみパリに戻ってきた彼女を待ち受けていたのは夫の死。奇妙な人間が彼女の周りに現れる。そんな時、大使館の情報局長が夫の意外な過去を彼女に知らせる。なんと、軍の資金を25万ドルも横領していたと聞かされ途方にくれる彼女。彼女は旅行中に知り合ったピーター=ケーリー・グラントに助けを求めるが、彼もまた奇妙な人間達の仲間であった・・・。
マイ・フェア・レディ 1964年 言語学者のヒギンズ教授(R・ハリスン)は下町の花売り娘のイライザ(O・ヘップバーン)のあまりにも下品な訛り・言葉使いに興味を持ち、友人のピカリング大佐に、自分が教育すれば半年で舞踏会に出られるぐらいの貴婦人に仕立て上げられると豪語し、賭けをした。そして厳しい教授のレッスンに堪えたイライザは見違えるような麗しき貴婦人へ変貌を遂げ、社交界へデビューするが・・・。
いつも二人で 1966年 ジョアンナ(オードリー・ヘプバーン)とマーク(アルバート・フィニー)の夫婦は倦怠期を迎え、お互いの気持ちは最早回復不能なまでに行き違うばかり。売れっ子建築家のマークが仕事先に向かうのに同行したジョアンナの脳裏に浮かぶ過去の日々。女の子ばかりのグループで旅行中に建築の勉強で放浪生活を送る文無しのマークと出会った頃。新婚当時、友人のキャシー(エレノア・ブラウン)とハワード(ウィリアム・ダニエルズ)夫妻と一緒に旅した日々。子供が産まれると共にマークが浮気をしてお互いの心が擦れ違い始めた頃。そして今、ジョアンナも浮気をしている。
暗くなるまで待って 1967年 夫のサム(ジンバリスト・Jr)が見知らぬ女性から受け取った人形にはヘロインが隠されていた。ヘロインを奪い返そうとする組織のリーダー、ロート(アーキン)は、マイク(クレンナ)とカルリーノ(ウェストン)の二人と共にサムのアパートで人形を探すが見つからない。そこで、妻のスージー(ヘプバーン)が盲目である事を知った3人は、人形の行方を突き止めるために一芝居打つ事に・・・。


映画のファッションブーム

オードリー・ヘップバーンのファッション 






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